総務省、光電融合技術を活用した地方分散型インフラ実証を支援
総務省は、次世代通信技術「光電融合」を活用し、地理的に離れたデータセンターを仮想的に一体運用する実証プロジェクトへの支援を検討している。データ処理・電力消費が集中する都市部のリスクを分散し、地方への拠点移転を後押しする政策の一環である。
◆背景:生成AIの普及でデータ需要と電力消費が急増
現在、国内のデータセンターの約9割は大都市圏に集中。生成AIやIoTの普及により、通信量と電力消費は指数関数的に増加している。一方で、大都市への一極集中は電力供給の逼迫や災害リスクの増大といった課題も抱えている。
政府は、地方へのインフラ分散と省エネ技術の導入を組み合わせることで、持続可能なICT基盤の再構築を進めようとしている。
◆光電融合技術とは
総務省が注目する「光電融合」は、従来の電気信号処理を光信号で代替し、通信の超高速化・低遅延化・低消費電力化を実現する技術である。これにより、遠隔地にあるデータセンター同士を**“仮想的に統合”**し、一つの施設のように稼働させることが可能になる。
特に注目されているのが、NTTが中心となって開発を進める次世代通信基盤「IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)」です。2032年度までに、現在の通信に比べ遅延を200分の1、消費電力を100分の1に抑えることを目指している。
◆「ワット・ビット連携」構想とは
総務省と経済産業省はこの取り組みを「ワット・ビット連携」と命名。通信インフラ(ビット)と電力インフラ(ワット)をセットで整備することで、地方分散を現実のものとする方針である。
将来的には、再生可能エネルギーの活用が可能な郊外拠点と、首都圏などの需要地を高速光通信で結ぶモデルを実現し、データセンターの集積地を地方にも構築していくとしています。
また、必要に応じて海底ケーブルの敷設や送電インフラの整備支援など、広域的なインフラ整備も視野に入れている。
◆市場・技術動向:実証はすでに世界で進行中
2024年には、英国で約89km、米国で約4km離れたデータセンターを1000分の1秒未満の遅延で接続する実証が成功。このような取り組みが、今後の分散型クラウド・AI基盤構築の鍵とされている。
国内では、ソフトバンク、KDDI、NTTデータ、IIJなど主要プレイヤーが地方拠点の展開に取り組んでおり、民間企業による実装も活発化している。