NTTとOptQCは、光量子コンピューターの実現に向けて連携協定を締結し、2030年までに100万量子ビット規模の量子コンピューター開発を目指すと発表した。本取り組みは、従来の計算処理では到達できない領域を切り開く新しい技術革新として注目されている。
■ 光量子コンピューターの大規模化に向けた共同開発
今回の連携では、NTTが長年培ってきた光通信技術と、OptQCが持つ光量子コンピューターの独自技術を融合し、拡張性の高い量子コンピューターを実用化することが狙い。
両社は以下のロードマップを掲げている。
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2027年:1万量子ビット(国内最大級)
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2030年:100万量子ビット(世界トップクラス)
100万量子ビットが実現すれば、従来型コンピューターで「10兆×1兆年」かかる高難度の計算が、わずか 4日間 で処理可能になる。また、1億量子ビット規模になれば、世界人口80億人分の新薬パーソナライズ計算も短期間で可能になるなど、医療・材料・化学など幅広い分野への応用が期待されている。
■ 常温動作・低消費電力という光量子方式の利点
多くの量子コンピューターが極低温環境を必要とするのに対し、光量子方式は 常温での動作が可能。これにより、
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大型の冷却装置が不要
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消費電力は一般的なPC並み
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設備スペースを抑えながら量子ビット数を拡張可能
といった利点が際立つ。光通信の部品と高い互換性を持つ点も、NTTにとって強みとなっている。
■ IOWNと組み合わせた“光による計算革命”
AIの普及に伴い、コンピューティングリソースと消費電力の増大が世界的な課題となっている。NTTが推進する次世代光ネットワーク「IOWN」は、光通信を活用して大容量データ処理における消費電力を大幅に削減する技術である。
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IOWN 1.0:すでに商用化
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IOWN 3.0(2028年頃):パッケージレベルでの光接続
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IOWN 4.0(2032年頃):コンピューター内部まで完全光化
今後は、IOWNによる光通信技術と光量子コンピューターを組み合わせ、世界規模の量子通信ネットワークを構築する構想も示されている。
■ 光が切り開く次世代コンピューティング
NTTとOptQCの協業は、古典コンピューターの限界を超えるための重要なステップであり、「光」による新たな計算パラダイムを提示している。100万量子ビット規模の光量子コンピューターが実現すれば、これまで不可能とされてきた計算が短期間で可能となり、エネルギー・医療・化学・材料など多方面での技術革新が期待されている。